一般的に視覚や聴覚は、理性で処理されるのに対して、五感の中で唯一、嗅覚は本能のみで処理されます。これは嗅覚でとらえた情報が大脳辺縁系と呼ばれる感情や本能を司る部分に直接伝達されるためです。このため、香りは記憶に残りやすく、匂いを活用したマーケティング戦略は良くも悪くも影響が大きいと言われています。
いい匂いは、甘い記憶や、幼少期の懐かしい記憶を想起させる一方で、悪臭もそれと同じくらい強いインパクトを持つことを忘れてはいけません。不快な臭いはストレスの原因となり、しばしば精神的な疾患を引き起こします。
食品工場では、他業界の工場に比べて、臭いが発生しやすく、どうしても近隣住民から苦情が寄せられることが多いです。従業員にとっても、労働環境への不快感や不満がたまることがあります。何より、悪臭を周囲に流しているとあっては、モチベーションダウンや離職につながりかねません。とはいえ、臭害を一息に解決するのは難しく、個別の臭いや各工場に適した対策が必要となります。それでも、周辺住民とのトラブルの種を解消し、従業員の労働環境を改善することの意義は大きいです。見逃されがちな問題点ですが、一緒に解決方法を模索していきませんか?
食品工場では一般的に大量の食材を濃縮して扱うことが多いため、高温多湿の環境と相まって臭気濃度が非常に高くなります。その中でも特に、鮮魚や鮮肉を扱う加工工場や、ニンニクを代表としたスパイスを多く扱う工場では住民との問題が表面化しやすくなっています。また、ケーキやチョコレートなどの製菓工場では、一瞬であればいい匂いでも、毎日長時間さらされることで不快感を覚えてしまう従業員が一定数いるようです。
しかしながら、譬え工場中に臭いが充満していたとしても、臭いの発生源を抑えてしまえば状況は一気に改善します。従って、漫然と脱臭装置を購入する前に、必ず「臭いの発生源の特定」を徹底してください。何を当たり前のことを、と思われるかもしれませんが、実は、大手の脱臭消臭専門の業者によると、脱臭対策がうまくいっていない現場では、臭いの原因が不明瞭なまま取り組んでいるケースや、真の臭い発生源が想定していたものと異なっていた、というケースがよくあるようです。感覚で判断するのではなく、従業員や周辺住民への聞き込みを行い、ニオイが発生した時間や場所といったデータから発生源を特定するようにすると真の要因が見えてくるでしょう。
臭いの発生源を特定出来たら、いよいよ実際に対策を練って実行します。
ここまでで何度か繰り返しているように、臭気対策の目的は
の二つがあります。
脱臭装置の導入と消臭剤の使用は、前者の、外部への臭い放出対策の側面が強いです。
脱臭装置は比較的臭いが強い場合におすすめです。脱臭装置には特殊なフィルターあるいは吸着材がついており、これらの材料が臭い分子をキャッチして取り除く役割を果たします。
この脱臭装置は、臭気の濃度に合わせてフィルターの枚数を変えることで脱臭強度を最適化することが可能です。脱臭装置は適切に使用すれば、臭気濃度を80~90%軽減することができ、絶大な効果を発揮します。
デメリットは当然コスト面です。商業用の脱臭装置になると、最低でも数十万円からで、高いものでは数百万円になります。ニオイの強い食材を調理する大型の工場には最適ですが、それほど大きくない工場ではオーバースペックとなり、費用の無駄遣いとなってしまう可能性があります。導入前には、臭気濃度の計測を行うとともに、詳細な検討と試算、機械の選定が必要となるでしょう。
また、一般的に脱臭装置はフィルターによる吸着を用いることが多いですが、臭い成分が水溶性であれば水中に溶解させることで脱臭する水スクラバー脱臭法というものもあります。また、臭い成分が揮発性の場合は熱処理による燃焼脱臭法、臭い成分が酸化分解可能ならば強力な酸化剤であるオゾンを利用して処理するオゾン脱臭法を選択することも可能です。また、最近は微生物による有機物や臭い成分を分解するバイオフィルターが環境に優しい脱臭法として注目されています。

この他にも臭い成分ごとに適した処理があり、その処理を行うための機械があります。
ご興味がございましたら、是非一度ご相談ください。
消臭剤は脱臭装置よりも安価で手軽と言えます。既存の排気ダクトに消臭器を取り付け、消臭剤を噴霧して臭いを中和するやり方が一般的です。最大のメリットとしては、消臭剤の細かな調合によって、ニオイの種類に応じて費用対効果の極めて高い対策が可能となる点です。デメリットは、メンテナンスと継続購入の必要性という運用コストの問題と、ニオイの種類や強さによっては技術的に現時点では消臭剤による対策ができない場合がある点です。
≪消臭器と消臭剤の構造≫

前項では工場外部に放出する臭い対策のお話をしましたが、ここでは従業員の労働環境の改善のための、工場内での臭い対策について触れていきたいと思います。
外部に放出する排気を脱臭するのは、空気の経路が限られているため比較的対策しやすいですが、工場内部で発生したニオイを、従業員が不快にならないように抑えるというのは技術的にも難しく、例えば活性炭マスクの使用など、小さな対策を積み重ねていく必要があります。衛生面やニオイ面に細心の注意を払う食品工場でも実行可能な対策をいくつかご紹介します。
代表的な例として挙げられるのは、局所換気と空気清浄機の導入です。
臭いの発生している空間には、まず空気清浄機の設置をお勧めします。従業員が感じる臭いを軽減し、空気を綺麗に保つことで総合的な空間の臭気濃度の改善を図ります。
ニオイが強力であった場合、空気清浄だけでの対策は難しいので、局所換気を行います。工場全体の換気を行い、外部の空気を徒に取り込むのはコスト面でも衛生面でも好ましいとは言えません。局所換気は、一部分だけをピンポイントで換気する方法で、身近な例ではトイレの換気扇もその一例で、局所的な臭いを取り除くのに有効です。
また、近年スポットクーラーならぬ、スポット脱臭機が導入され始めています。もともとは医療現場での利用が主流でしたが、最近では工場などでも利用され始めています。
臭いの元にノズルを近づけ、ニオイが従業員の鼻にたどり着く前に吸引します。内部にはフィルターがあり、吸い込んだ臭いを外に漏らすことはありません。アンモニアなど代表的な臭い成分を90%以上吸引することが可能で、作業場を快適に保ってくれます。
HACCPの導入は、特定の設備の導入や対策法というわけではありませんが、恒常的に臭い対策を可能としてくれます。HACCPは工場のプロセス全体を分析し、潜在的な危険を特定する方法です。これにより、臭いの発生源を特定し、対策を検討することが可能になります。要はHACCPを導入することは、ここまでに書いてきた臭いの発生源特定から個別の対策という、臭い対策の流れをシステムとして導入することと同じなのです。また、HACCPに基づき、除菌、防カビ、温度・湿度コントロールなど工場内部の環境を清浄に保つことで、不快な臭いの発生を未然に防ぐこともできるでしょう。
2021年の6月から食品工場に義務付けられたHACCPの導入ですが、HACCPハード事業という最大5億円が支給される補助金がございます。少しでも興味があるという方、話だけでも聞いてみたいという方は是非お気軽にお問い合わせください。
食品工場の臭い対策について、専門家の意見を求め、アカネサスに話を伺いました。工場の臭い対策は品質管理と同じくらい重要です。その理由は、不快な臭いが周辺住民や訪問者に与える印象が、製品の品質や企業イメージに直結するからです。具体的な対策としては、換気システムの強化や、臭いを吸収する特殊なフィルターの使用、定期的な清掃といった物理的な対策が基本となります。アカネサスのアドバイスを参考に、食品工場の臭い対策を見直してみてはいかがでしょうか。