食品工場は消費者が口にする飲食品を取り扱っているという性質上、そもそも工場を設計・建設する段階から防虫対策について考えて異物混入や環境汚染のリスクに対処しておくことが不可欠です。
特に飲食品の製造工程において害虫が製造ラインへ侵入してしまい、商品の中へ異物が混入してしまった場合、衛生面における不備や食品の問題がSNSやインターネットで拡散されて世間に広まってしまうだけでなく、深刻な企業イメージの低下や食中毒の発生といった問題へ発展します。その際に失われた信頼や生じた損害を取り戻すことは容易でありません。
また、設備環境を整えるだけでなく、日頃から全ての従業員で安全衛生意識を共有し、日常的に防虫対策や安全管理に取り組んでいくことも大切です。
食品工場において虫に関連したトラブルが発生する原因としては、大きく以下の5つのパターンが考えられます。
工場の窓や扉が開いていたり換気扇やダクトのカバーに隙間があったりする場合、空を飛べるハエや蚊、ゴキブリといった害虫が侵入して、そのまま製造ラインへ飛んでいくリスクが高まります。飛来侵入はライン上のあらゆる場所へ虫が飛んでいき、異物混入や機器のエラーの原因になり得ます。
ゴキブリやクモ、ムカデ、アリなどの害虫であれば、床や壁を歩いて製造ラインへ侵入する恐れもあるでしょう。また扉や窓を閉めていても、壁の亀裂やドアの隙間などから小さな虫が侵入してくる場合もあります。
排水溝や排水設備の不備によって水が溜まっていたり、水の汚染や汚れを放置していたりした場合、臭いに誘われて害虫が入ってきたり、いっそ水場を発生源として虫が繁殖したりといった危険性も高まります。また排水設備の不具合はカビの発生にもつながりかねません。
作業員の衣服や靴に虫が隠れていたり、虫の卵が付着していたりする場合、作業場へその服を着たまま入ることで工場内における害虫発生リスクが高まります。
作業員自身が身だしなみや清潔さに意識することはもちろん、工場の外で着ていた服や靴などのまま作業場へ入れないよう区画整備を行うことも大切です。
食品工場では材料になる食材や食品を保管していたり、処分待ちの生ゴミが発生していたりすることもあるでしょう。言い換えれば食品工場は虫にとって餌が豊富にあり、繁殖しやすい場所でもあります。
また仕入れ時に食品の外装や包装の内部に虫の卵が混入していて、そのまま工場内で孵化・発生するといったケースもあります。
食品や食材を保管している倉庫や、食品工場などで発生しやすい害虫として、ゴキブリやハエといった虫の他にも様々なものが考えられます。
例えば機械の隙間やカビの生えやすい場所、食品倉庫の中ではゴキブリはもちろん、コクゾウムシやヒメマルカツオブシムシ、ノシメマダラメイガ、コクヌストモドキ、そしてチャタテムシ類といった数多くの害虫リスクを無視できません。
さらにチョウバエやノミバエ、蚊といった害虫も水周りに発生しやすい害虫であり、成長すれば飛来侵入のリスクを高める点も重大です。
害虫が発見された場合、適切な防虫対策を実施するためには正しい流れを守らなければなりません。
害虫駆除や防虫対策を実施する上で最初にすべきことは、発生している害虫の種類や発生規模を特定して、どのような対処法が適しているのか具体的かつ正確に検討することです。
また、虫の種類によって効果のある殺虫剤や防虫剤が異なるだけでなく、食品工場という性質上、場所によって使用できる駆除法も制限されしまうことを理解しておきましょう。
発生している害虫の種類が特定されれば、続いて侵入経路や発生源を調査します。虫が工場の外から侵入してきたのであれば、屋外からの侵入経路について防虫対策を施しますが、もしも工場内で発生・繁殖しているのであればより抜本的な対策を講じなければなりません。
防虫対策の要は発生源を特定してリスクを根絶することであり、ただ目の前に出現している害虫を死滅させるだけでは対策として不十分です。また、発生源が分かれば同時に発生原因を考えることもできます。
対処すべき虫や状況に合わせて駆除を行った上で、再発リスクを抑えるために定着防止対策を実施することも必要です。
目の前にいる害虫を駆除したとしても、適切な定着防止対策が施されていなければ再び害虫が発生してしまいます。そのため、防虫剤などを設置するだけでなく、発生原因について対処し、例えば工場の建物の劣化や老朽化、また各種機器や設備の不具合といった問題があれば全てを適切に修繕・整備していくことが大切です。
害虫駆除を行って定着防止対策を行ったとしても、別の場所で他の害虫が発生したり、別の原因で新しい害虫が侵入してきたりすれば、いつまで経っても安心安全な食品製造環境を整えることができません。
同じ場所から同じ害虫が侵入しないように定着防止対策を考えるだけでなく、そもそも工場全体で害虫や異物混入についてのリスクアセスメントを実施して、害虫発生や異物混入といったトラブルが繰り返されないよう全体で対策を考えましょう。
工場内で害虫の発生・繁殖を防ぐためには、まず発生源や誘因源となるものを除去して、適切な防虫対策を行うことが必要です。
汚水や生ゴミ、ホコリなどを日常的な清掃で除去して清潔な環境を保ちながら、機器や設備の点検によって不具合やリスクの早期発見にも努めましょう。
また対処すべき虫に合わせた防虫剤の使用も有効です。
屋外から床や天井、壁を伝って侵入してくる虫に対しては、壁の亀裂やドアの隙間を塞いで密閉したり、虫がえしのような防除グッズを利用したりすることが考えられます。また工場の周囲の地面や外構を舗装して土の露出を減らしたり、植栽を管理して虫の発生源になる雑草や植物が繁殖しないよう調整したりすることも欠かせないでしょう。
排水溝や側溝を清掃して汚泥やゴミを除去し、悪臭によって虫が誘引されないよう清潔な環境を保ちます。また水場を繁殖地にする害虫を防止するため、水の流れが適切に保たれるよう排水設備の状態などをメンテナンスすることも大切です。
その他にも排水孔の周りにトラップや殺虫剤・防虫剤を設置するといった方法があります。
食材や原料の外装に付着した虫や虫の卵などの侵入を防ぐため、パレットを使い分けたり、搬出入の経路を限定して工場内へ持ち込む前に容器を詰め替えたりといったことも効果的です。
また作業員の衣類や靴、カバンなどにも注意して、作業員が場内へ入る前にエアシャワーや粘着ローラーで汚れをしっかりと取ることも徹底しましょう。
外灯や照明を設置する場合、害虫を誘引する紫外線の発生しにくい低誘虫灯を使用したり、既存の照明設備に防虫フィルムを使用して虫の誘引性を抑えたりする対策が考えられます。
また、作業場の内外をエアカーテンやシートシャッターで分離したり、前室を設置して気圧管理や臭気管理を行い、場内の臭いが屋外へ漏れないよう調節したりすることも有効です。
食品工場は取り扱っている製品や製造工程の性質上、特に害虫の発生や異物混入のリスクに注意すべき環境といえます。しかし、食品工場では様々な害虫のリスクが考えられ、後追いの対処では追いつかなくなる恐れもあります。
たった1匹の虫が食品に混入するだけで企業の社会的信用が失われることもあるため、工場を建設する段階から防虫対策やリスク管理を徹底していきましょう。