食品工場で備えておきたい水害対策

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集中豪雨やゲリラ豪雨、大型台風が近年多発しており、食品工場においても水害は無視できない問題になっています。深刻な浸水被害をできるだけ防ぐためにも、水害対策は必須です。水害・浸水が食品工場に与える影響やリスク、取り組みたい水害・浸水対策について解説します。

水害・浸水が発生するとどうなる?
食品工場への影響とリスク

建物の復旧に時間・コストがかかる

食品工場が浸水被害を受けた場合、生産を再開する前に安全性を確保するための消毒や検証作業などを行わないといけません。一般的な製造工場に比べ、復旧により多くの時間とコストがかかることが予想されます。

機械設備の水没・損傷で生産活動が停止する

水害の発生で工場内部にまで水が侵入した場合、製造を担う機械設備も被害を受けます。建物自体に大きな損害がなかったとしても、機械設備が水没して損傷すると工場の稼働ができなくなり、生産活動の停止によって大きな経済的損失を招く恐れがあります。

人的被害の発生

水害は、工場の建物や機械設備に損害を与えるだけでなく、従業員に人的被害を及ぼす恐れもあります。特に夜間の豪雨や予測不能な増水といった急な水害が発生した場合、避難が遅れて深刻な被害を引き起こす恐れがあるため、十分な注意が必要です。

人的被害は取り返しのつかない結果を招くこともあり、企業の社会的責任にも関わってきます。そのため、水害対策では従業員の安全確保を最優先に取り組む必要があります。

原材料の損壊による経済的な損失

水害によって工場内が浸水すると、原材料が損壊するリスクがあります。原材料が損壊すれば生産や出荷の停止につながり、売上の減少を招くだけでなく、廃棄処理のコストも発生します。

特に食品は水に濡れるだけで価値を失うため、経済的損失を抑えるには水害や浸水を想定した対策が不可欠です。

被害をできるだけ減らすために
食品工場で取り組みたい水害・浸水対策

土のう袋を用意する

土のう袋は、中に砂や土を入れて建物の入り口などに積み上げ、浸水をせき止めるアイテムです。水害発生のニュースなどで、土のうを高く積んでいる映像や写真を目にしたことがある方もいるでしょう。袋を積み上げるだけのシンプルで短時間の対策でありながら、工場内部への水の侵入を防ぐ効果があります。

いざ水害が発生した際にすぐ行動できるよう、あらかじめ適切な場所に土のう袋を準備しておきましょう。

止水パネルを設置する

止水パネルも、土のう袋と同様に水をせき止めることを目的としたアイテムです。工場や倉庫などの建物の周囲に設置することで、水害発生時に建物内部への浸水を防いでくれます。コンクリート壁で囲まれた工場の場合は、門扉周辺に止水パネルを設置することで水の侵入を防ぐことが可能です。

製品によっては、流木やがれきなどの漂流物が建物に衝突するのを防ぐ機能を備えたものもあります。

日頃から床に物を置かないようにする

作業に使用する道具や原材料などを床に直接置いていると、水害で建物内に水が浸入した際にすべて使用不能になる恐れがあります。経済的損失を最小限に抑えるためにも、道具や原材料は水の影響を受けない高所で保管しましょう。

作業に使用する設備についても、できるだけ足のついたものを選んだり、台の上に設置するなど、水没を防ぐ工夫が必要です。

吸水性の高い掃除道具を備えておく

水害で工場内に水が浸入した場合、排水と清掃を行う必要があります。いざというときに迅速に対応できるように、排水・掃除に適した道具をあらかじめ準備しておきましょう。

建物全体にまで水が浸入した際には水処理が必要です。速やかな復旧のためにも、スポンジローラーやモップなど吸水性の高いアイテムを備えておきましょう。侵入した水量が少ない場合も、吸水性の高いアイテムを入り口近くに配置しておけば、被害を最小限に抑えられます。

水害発生に備えたルールの構築と訓練の実施

水害発生時に被害をできるだけ抑えるには、適切な初動が重要になります。たとえば土のう袋や止水パネルを事前に準備していても、従業員が置き場所や使用方法を把握していなければ、迅速かつ適切に行動するのは難しいでしょう。

慌てて行動すると、怪我や事故につながる可能性もあります。そうならないためには、水害対策の基本ルールをあらかじめ定め、定期的に訓練を実施することが大切です。

重要データはバックアップを取っておく

工場内に保存されている顧客情報や技術データなどの重要なデータが水害で破損・消失した場合、事業継続が困難になる恐れがあります。建物や設備なら再投資すれば修復できますが、データの復旧は非常に難しく、最悪の場合は不可能となるケースもあります。

さらに、水害だけでなく停電時にもデータを損失する可能性があるため、災害や事故に備えて重要データは定期的にバックアップを取り、クラウドにも保存しておきましょう。

排水設備の掃除を定期的に行う

工場では定期的に建物のメンテナンスが行なわれていると思いますが、見落とされやすいのが排水設備です。排水設備が詰まっていたり汚れたりしていると、水害が発生した際に侵入した水を適切に排水できず、工場内に被害が及びやすくなります。

工場内部への浸水を防ぐために、排水設備のメンテナンスも定期的に行うようにしましょう。適切なメンテナンスを続けることで、カビやサビ、害虫の発生を抑え、工場の衛生状態の維持にもつながります。

建物を補強する

河川の氾濫などで流されてきた漂流物が工場に衝突した場合、建物が破損する恐れがあります。土のう袋や止水パネルでは建物の破損部分からの浸水は防げないため、被害が拡大しかねません。物理的な被害を防ぐには、外壁やガラスの補強が重要です。

外壁に劣化で脆くなっている部分がないかを定期的に確認し、早期発見・修理に取り組みましょう。また、ガラスについては補強用のフィルムを貼る、シャッターを取り付けるといった対策も有効です。

工場の建設前にハザードマップを確認する

工場を新たに建設するにあたり、ハザードマップは真っ先に確認するようにしましょう。ハザードマップでは災害の危険性が高い地域を視覚的に把握でき、工場の立地選定や適切な備えの準備に役立ちます。

ただし、災害の危険性が低い場所でも絶対に安全というわけではないので、水害・浸水対策は必須です。

リスク分散のために拠点を分ける

既存の工場がハザードマップで危険性の高い地域にある場合は、リスク分散のために拠点を分けることも検討すべき問題です。

生産拠点が1ヶ所に集中していると、水害の被害を受けた際にすべての業務が停止し、莫大な損害につながる恐れがあります。被害を最小限に抑えるためにも、生産拠点は複数に分散することが推奨されます。

まとめ

近年多発する集中豪雨や台風により、食品工場も浸水被害を受ける可能性があります。工場内部にまで浸水すると、建物や設備が損傷するだけでなく、生産停止による経済的損失や人的被害など、深刻な影響を及ぼす恐れがあります。

復旧には多大な時間とコストがかかるため、被害を最小限に抑えるには水害・浸水を想定した備えを進めていくことが重要です。