HACCP対応の工場を新しく建てる場合、注意すべきポイントは「工場の周辺環境」「動線計画」「掃除のしやすさ」「設備」の4つです。それぞれのポイントについて、解説します。
HACCP対応の工場を新しく建てる場合にまず注意したいのが、工場建設を予定している場所の周辺環境や立地です。
衛生面を考えたときに周辺にどのような施設があるのかは重要な要素となり、たとえばネズミや害虫の発生源となる飲食店が多く存在する周辺環境の場合、ネズミや害虫が工場内に入らないような対策を講じる必要があります。
そのほかにも周辺に煙やちり・ホコリを発生させる施設がないか、昆虫の繁殖する樹木はないか、排水・廃棄に不便な立地じゃないか等を注意してチェックすることで、必要な対策のみに絞ることが可能。対策のための設備投資を最低限に抑えることができます。
HACCP対応の食品工場を建設するにあたって、動線計画が重要になってきます。
作業者の動線を意識した設備配置にすることにより、作業効率のアップや衛生面の強化を叶えることが可能です。そのためにも、どのような設備を導入するのかだけでなく、どこに配置するのかということも注意して検討するようにしましょう。
工場の設計段階から業務フローを想定して設備の配置を決めることは、不要な設備の導入を回避できるメリットもあります。また、将来的にレイアウト変更が必要となる場合も考えられるため、対応できるような構造を考えておくことも大切です。
工場の衛生面を維持するには、掃除のしやすさも重要です。
たとえば、床・内壁・天井は洗浄・消毒ができる素材が用いられているかを確認しましょう。また、床を水で洗浄する場合、不浸透性の材質や排水が良好な勾配等を意識して、清掃のしやすい構造を心がけます。不衛生になりやすい排水溝や排気口についても、掃除しやすい構造にすることが大切です。
また、食品工場では壁と床の接点が丸みを帯びたR構造の床も採用されています。一般的な接点が直覚的な構造よりも清掃器具が隅々まで届き、清掃しやすいのが特徴。特に穀粉を扱う工場では床の隅に粉が溜まりやすいので、R構造の床を検討してみることをおすすめします。
トイレやドアノブ等の一般設備が汚染原因となることもあるので、導入する設備にも注意が必要です。トイレの手洗い設備やドアノブについては、直接手で触れなくても良いように自動水栓や足踏み式、自動ドア等の設備の導入を検討しましょう。
また、食品工場では、空調・換気設備に不備があると異物混入の原因になりかねません。特に古いエアコンは吹き出し口からホコリ等が飛び出る場合があり、エアコンの近くに作業場があると異物混入の可能性が高くなります。
換気設備についても昆虫等の侵入経路となることがあるため、周辺環境に注意して設置場所を決めることが大切です。また、外気を取り入れる設備に関しては、フィルター等を活用しましょう。そのほかには、清掃区域に汚染区域から空気が流入しないような室の圧力管理も求められます。
工場における衛生面の課題について、「洗浄工程」「加工工程」「清掃」の3つのポイントから見ていきましょう。
食品工場の洗浄工程において、特に注意したい食品は「野菜サラダ」です。
野菜サラダは水洗いだけで野菜に付着した微生物や汚れを十分に殺菌・洗浄することができず、そのままだと食中毒を引き起こす恐れがあります。そのため、多くの工場では洗浄剤が使用されています。次亜塩素酸ナトリウムを希釈した溶液を使用する場合、使用後に十分な洗浄をして溶液を洗い流すようにしましょう。
また、洗浄工程で食材に微生物が付着しないような衛生環境を整えることも重要です。
肉や魚は加工前に、付着した動物性たんぱく質や皮脂の汚れを洗浄する必要があります。ただ、一般的な洗浄方法だと汚れを取るのは難しいため、動物性の食材の洗浄には界面活性剤を含むアルカリ性洗浄剤が使用されます。
また、魚に付着した生臭い臭いやカビについては、次亜塩素酸ナトリウムを配合したアルカリ性の発泡洗浄剤を使うことにより抑制することが可能。洗浄剤を使用した後は十分な量の水で洗い流し、次の加工工程で洗浄剤の影響が残らないようにしましょう。
食品工場では施設や設備から食材に汚染する影響を考慮し、工程や場所ごとに清掃方法を決める必要があります。清掃方法を決める際は、工場をゾーニングして汚染区・清掃区等に分類して考えると良いでしょう。
また、汚染の影響が少ない場所は一般的な清掃で問題ありませんが、食材への汚染が考えられる場合は、洗浄・殺菌まで行います。その後、施設の微生物検査等を行って、清潔な状態に維持することが大切です。
食品製造工場では原材料の受け入れから出荷まで多くの工程があり、各工程に応じた適切な衛生管理を行う必要があります。そのためにも、食品製造の各工程で起こりうるリスクを把握することが大切です。HACCPに準拠した視点から考えられるリスクとしては、以下の例があげられます。
これらのリスクを予防するには、有害微生物や異物を感知・除去する仕組みを構築するほか、適切な温度・時間による加熱の実行・管理、定期的かつ適切な機器のメンテナンス、データ管理の徹底が必要です。
一般衛生管理とは、どの食品についても行うべき共通事項のことで、普段から取り組む衛生管理の項目を指します。HACCPにおける一般衛生管理に取り組むうえで、どのようなポイントに注意すればいいのかについて紹介します。
食中毒を防ぐには、有害な菌を「付けない」「増やさない」「排除する」ことが非常に重要です。一方で、食品工場では、加工・調理・盛り付けの工程等で生肉や生魚介類等が他の食品に接触し、汚染が広がる可能性があります。これが、交差汚染・二次汚染です。
人的ミスが主な要因となる交差汚染・二次汚染を防ぐには、食材はふたの付いた容器等に入れ、冷蔵庫内で区別して保管。また、まな板や包丁等の調理器具は用途別に使い分け、使用するたびに十分な洗浄・消毒を行うことが求められます。
また、冷蔵庫内も区分表示をし、常に決まった場所に決まった食材を保管するようにしましょう。まな板や包丁等も用途が一目で分かるように、形や色で区別するのがおすすめです。
交差汚染・二次汚染の対策例としては、生肉や生魚介類等から汚染した食材は、必ず加熱してから提供するようにしてください。場合によっては、食材として使用しないという判断が必要です。
器具等の洗浄・消毒・殺菌を行う目的は、まな板や包丁、ボウル等の調理器具に汚れが残っていると、ほかの食品に汚れや有害な菌の汚染が広がる恐れがあるからです。そのため、調理器具は使用するたびに洗浄し、消毒するようにしましょう。
また、調理器具等の保管場所を常に清潔に保つことも大切です。
調理器具等を管理する際のポイントは、洗剤を正しく使用すること。洗剤希釈マニュアルや説明書等を確認し、正しい希釈濃度・使用量で使用しましょう。また、調理器具等についた汚れはあらかじめ洗浄で落としてから、消毒を行います。
健康に障害を与える異物が食品に混入した場合、罰則の対象になります。そのため、異物混入防止にいかに取り組むかは、食品産業における重要な課題です。
原料由来の異物混入を防ぐ対策としては、「新鮮で安全な食材を提供してくれる取引先を選ぶ」「検品場所と保管・調理場所を別にする」「検品時に異物の付着・混入がないかを目視で確認する(外装の傷み・汚れのあるものは受け入れない)」などがあげられます。
そのほかにも、髪の毛や害虫、こげ、骨・皮などの異物が混入する可能性が考えられるため、それぞれの異物混入リスクに応じた対策が必要です。
外部からの汚染としては、ホコリなどの混入、ねずみ・害虫の工場内への侵入、搬入した原材料の段ボールなどに付着した有害微生物などがあげられます。HACCP対応の食品工場を建てる場合は、これらの外部からの汚染対策がしっかりと行われているかチェックするようにしましょう。
HACCPにおける重要管理とは、食品の調理方法に合わせて行なうべき事項のことです。食品に合った管理方法を策定する際は、「非加熱のもの」「加熱するもの」「加熱後冷却するもの(または冷却後に再加熱するもの)」などの調理方法ごとのグループに分類します。
刺身やサラダといった冷たいまま提供されるものは、菌を増やさない管理方法が求められるため、冷蔵・冷凍庫の温度確認が重要。加熱して熱いまま提供する焼き魚や肉料理などは、適切な加熱で菌をやっつける必要があります。ポテトサラダやカレーなどの加熱後冷却するもの(または冷却後に再加熱するもの)は、速やかな冷却と適切な加熱が必要です。
重要管理において、特に注意したいのが食中毒のリスクです。重要管理でのポイントは、食品中に有害な菌が増えやすい危険温度帯(10~60度)を避けること。また、食品を「非加熱のもの」「加熱するもの」「加熱後冷却するもの」に分類したら、各グループで安全な食品を提供するためのチェック方法を決め、管理します。
常温放置や不十分な加熱、不適切な保存方法は食中毒リスクを高める原因となるため、管理方法が決まったらチェックを徹底することが重要です。
HACCP対応の工場を建設するにあたって、十分な衛生管理が行えるのか不安に感じている方もいるでしょう。そういった場合は、管理システムを活用するのも選択肢の1つです。
たとえば温度管理システムを導入した場合、食材の保管場所や調理環境が食品管理に適した温度かどうかをチェックすることが可能。工場の衛生管理に必要な機能を搭載した管理システムを活用することにより、衛生管理を効率的かつ的確に行えるようになります。