食品工場が考えるべきフードディフェンス

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フードディフェンスとは

フードディフェンスとは、日本語に直訳すると「フード=食品」「ディフェンス=防衛」という意味で、第三者による意図的な異物混入の被害を防ぐための取り組みです。2001年のアメリカ同時多発テロをきっかけにテロ抑止の考えが広まり、日本の食品関連業でも重要視されるようになりました。

食品の製造工程で異物や有害物質が混入すると、商品を口にする消費者や食品を取り扱うすべての人に危害を及ぼすおそれがあります。

健康を害する重大インシデントに発展しないためにも、第三者による異物混入を未然に防がなくてはなりません。

HACCPとの違い

衛生管理の国際的な手法であるHACCPにも異物混入防止の項目は存在しますが、あくまでも過失による混入を防ぐもの。HACCPは、人為的なミスや機械の故障など偶発的な事故による食品事故を防ぐための管理で、悪意ある第三者による混入、つまりテロ行為は想定されていません。HACCPでしっかりと衛生管理を行っていても、異物混入が起こる可能性は残されているのです。

HACCPに頼るだけでなく、フードディフェンスを補完的に行うことで、より安全性の高い食品を提供できるようになります。

具体的なフードディフェンスの取り組み

人的要素(部外者)

部外者が食品工場に立ち入るとき、立ち入る際のチェック体制を強化することで故意の異物混入を防ぐことができます。

工場に立ち入る前には、訪問者の身元や訪問理由、訪問先を確認します。また、訪問者が施設内を移動する際は自由に施設を歩き回れないようにすることが大切です。

郵便や宅配物などを届ける配達員についても、受け入れ先を数か所に絞るのが効果的。エリアによって立ち入り制限を設けたり移動場所までは従業員が同行したりなど、施設内における部外者の単独行動を防ぎましょう。立ち入り前は徹底した持ち物管理を行い、常に従業員の目が届く状況をつくります。

人的要素(従業員)

意図的な異物混入の犯行の多くが、生産や業務に携わる従業員によって行われています。従業員の採用時には身元確認を行い、ポケットのない制服を導入するなど服装規定を見直しましょう。労働エリアごとに制限された入退室キーを用意する、従業員の移動や退室時に鍵を返却させるなどの取り組みも効果的です。

また、従業員が雇い主(会社)や社会に対して不満を抱えていると、恨みやねたみ、反発心から犯行を起こしやすくなります。従業員の労働条件や職場環境を見直すなど、内部の根本的な見直しも異物混入防止につながる可能性があります。

施設管理

不審者が施設に立ち入ることを防ぐ仕組みづくりも大切です。24時間体制で警備を行う、防犯カメラ・監視カメラを設置するなど、不審者の目につきやすい取り組みが抑止力につながります。自動化が進んで少人数で稼働している工場や、時間帯によって無人になる工場で効果的です。

鍵の管理の強化も外部からの侵入を防ぎます。定期的に鍵を取り替える、暗証番号を変更するなどの管理方法を策定しましょう。

組織マネジメント

フードディフェンスは、個人単位で行えるものではありません。食品工場で取り組むなら、フードディフェンスに適した組織を作って管理体制を構築しましょう。

工場単体ではなく組織全体で取り組むことによって、万が一のインシデント時にも素早く対応できるようになります。対応が迅速なほど被害の発生や拡大を防ぐことにつながります。