食品工場におけるカビ対策

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食品工場では厳格な衛生管理が求められますが、カビ対策もそのひとつです。もともと湿度が高い日本で、水を扱う食品工場ですから、カビの発生には細心の注意を払う必要があります。カビ発生の原因や環境、どのような対策が必要かを詳しく解説していきます。

カビが発生する原因

カビは「真菌」という生物で、その体は菌糸と胞子からできています。 菌糸の先から水分や栄養分を吸収し、胞子を飛ばして増殖します。真菌の仲間には酵母やキノコといった食べられるものや役に立つ物があり、ブルーチーズやペニシリンは代表例です。

カビの大元は胞子で、空気中にも漂っています。胞子は植物のように発芽し、細胞分裂しながら菌糸が十分に伸びて成熟すると、新たに胞子を作ります。その胞子が空気中に舞い上がり、飛散してカビが増殖するのです。

約8万種以上あると言われるカビの種類ですが、食品工場で多く見られるのはクロカビ、アオカビ、コウジカビの3種類。カビの色が判別できるようになっていると、すでに胞子は飛散しています。

カビが発生しやすい環境

カビの元である胞子が空気中を漂っているなら、防ぎようがないと思ってしまいますが、カビが成長しやすい環境があります。カビ対策にはその逆を行えば良いので、どのような環境でカビが発生しやすいか知っておくことが大切です。

温度

カビの成長に適した温度は、25〜28℃です。しかし、0〜40℃でも成長は可能ですし、60℃以上でも成長できるカビもあります。

25〜28℃は春先、梅雨、秋口など夏の前後の季節にあたります。よく雨が降る時期とも重なるので、特にカビが発生しやすくなります。

湿度

湿度65%以上でカビは繁殖しやすくなり、湿度が高いほど早く繁殖します。しかしながら、湿度が65%以下であっても、成長が遅くなるだけでカビは生存可能です。

乾燥していても繁殖するカビもあるので、湿度管理だけではカビの発生を防ぐことはできません。

栄養

餅やパン、ケーキなどにカビが生えてしまった経験があるのではないでしょうか。カビは生物なので、成長するには栄養が必要です。カビが特に好むのは糖分やデンプンなどですが、ホコリや人の垢、ホコリ、壁材など、さまざまなものが栄養分となります。

pH(ペーハー)

pHとは、酸性・アルカリ性・中性を判断する指標として使われる水素イオン濃度のことです。カビが発生するのに最適なのはpH4〜4.5の弱酸性。しかしpH2〜8.5の範囲でカビは生存できるため、弱酸性から弱アルカリ性の幅広い環境で生息できます。

食品工場におけるカビの調査

食品工場内にカビがどのくらい存在するかを調べるには、2つの測定方法があります。それぞれ詳しく説明します。

浮遊菌測定法

カビの胞子は空気中を漂っているので、浮遊している菌を集めて測定する方法です。エアサンプラーで一定量の空気を集め、シャーレなどに吹き付けて培養し、微生物の数を測定します。

空気はすぐに集められますが、培養して測定する装置が必要となります。

落下菌測定法

カビの胞子は空気中を浮遊していますが、浮遊菌のうちある程度の大きさのものは重さで落下します。落下菌測定法ではシャーレを下に置き、一定時間内に落下した菌を培養して数を測定します。簡単に測定はできますが、捕集に時間がかかる上に基本的にカビの胞子は空気中を漂っているので浮遊菌を測定できません。

食品工場におけるカビ対策とは

温度・湿度を適切に管理する

カビは、温度0〜40℃、湿度65%以上で成長します。食品工場では水回りや冷蔵庫、冷凍庫、調理場の天井などで湿度が高くなる箇所があるので、空調や除湿機などを活用して適切に湿度管理をする必要があります。

カビは幅広い温度帯で成長できますが、食品工場内では特に成長しやすい25〜28℃の室温を避け、成長速度を遅らせるよう気をつけます。温度・湿度ともに適切に管理することが重要です。

空調をこまめに清掃する

食品工場内には空調設備が設置されていますが、ホコリや水分が溜まりやすいという特徴があります。空調設備内はカビが好む環境となり、空調内でカビが発生すれば空調によって胞子が飛散してしまいます。

そのため空調をこまめに掃除して、ホコリや水分が溜まらないようにし、カビを発生させないことが大切です。

防カビ剤を塗布する

カビの成長を防ぐために、防カビ剤を塗布するのも効果的です。広い範囲に塗布する場合には、くん煙剤で室内全体をいぶすと良いでしょう。防カビ剤を塗布しても、カビは発生することがあります。温度・湿度の管理、空調の清掃と併せて適切にカビ予防を行っていきましょう。