食品工場の建設は、近年の経済状況の変化や環境問題に対応するため、国や地方公共団体から提供される補助金や助成金によって、多大な支援を受けることができる分野となっています。特に、新型コロナウイルスの影響を受け、事業継続や再構築を目指す中小企業や小規模事業者に対して、経済産業省は「経済政策の重点」として支援の手を差し伸べています。
補助金制度は、国や地方が抱える課題に対して効果的な解決策を提供する企業や事業者を支援するための仕組みです。これには、環境に配慮した工場建設や、感染症対策を含む新しい生産手法の導入などが含まれます。具体的には、新規に工場を立ち上げる際や、既存の施設を拡大・改修する際の費用の一部を国や地方公共団体が負担してくれるため、事業者のコスト負担を軽減することができます。
ここでは工場建設や改修はもちろんのこと、IT導入など食品工場の設備投資で使用できる補助金をご紹介します。
ものづくり補助金は、新しい商品を開発したり、工場での作業効率を良くするために機械や設備を新しくする時の費用を手伝ってくれる支援金です。ものづくり補助金は製造業に特化しているように感じられがちですが、実際にはその適用範囲はより広いです。この補助金は、新しい機械や装置の導入だけでなく、ITシステムの構築、クラウドサービスの活用費用にも適用され、技術導入や専門家によるコンサルティング費用を含む多岐にわたるプロジェクトが対象とされています。
一方で、建築費用に関しては補助の対象外となっていますので、これは留意する必要があります。何か新しい機械設備や業務用のシステムを導入したい方にはおすすめです。
食品機械の値段がどんどん上がってきている中、2024年については、上限8000万円の省力化枠が新設される見込みで再び注目されています。補助額(上限) | 1億円 |
補助率 | 1/2~2/3 |
製造業で働く人が20人以下の小さな会社を支えるための補助金です。新しいサービスや商品を作り出すだけでなく、既存事業の拡販や売上アップを支援してくれます。 20人以上の規模の会社であったとしても、グループ企業に従業員が20人以下の場合であれば採択されます。
補助額(上限) | 250万円 |
補助率 | 2/3~3/4 |
「事業再構築補助金」は、企業の持続性と成長を促進するために設計された財政支援策です。
新事業、新商品、新サービスの導入に使える補助金です。設備投資、広告宣伝費、建築費、外注費など非常に幅広い費目に対して利用可能なため新しいプロジェクトに必要な様々な経費の一部をこの補助金で賄うことができます。
この補助金は、従来のビジネスモデルに加えて新規事業への投資を奨励し、特に中小企業の事業多角化と新市場への進出を支援することを目的としています。企業の規模や採用する補助金のカテゴリに応じて、補助率や上限額が異なりますが、成長を目指す中小企業で従業員数が101人以上の場合、補助率は1/2で、最大7,000万円までの補助が提供されることが一般的です。 この補助金プログラムの特徴の一つは、その対象経費の汎用性の高さです。新築を含む建物の建設コストも補助対象になるため、資金的な負担を軽減しつつ、大胆な事業展開が可能になります。
経営の安定化のために新しい事業に乗り出そうと考えている企業、もしくは現状のビジネスが順調でなく新たな方向性を探している企業にとって、この補助金は大きなチャンスとなり得るでしょう。
補助額(上限) | 7000万円 |
補助率 | 1/2~3/4 |
IT導入補助金は、主に、以下の二つの目的で使用されます。
1)IT機器やソフトウェアを新たに導入する費用に充てることができます。たとえば、事務の効率化を図るためのパッケージシステムや、会計ソフト、顧客管理システムなど、事業運営をスムーズにするためのIT製品の購入に利用可能です。
2)DX化(デジタルトランスフォーメーション化)と呼ばれるプロセスに使うことができます。これは、企業がデジタル技術を活用して業務を効率化したり、新しいサービスを展開したりすることです。例えば、オンラインでの注文システムの構築や、データ分析を行うためのツールの導入など、デジタル技術を使って事業を進化させる様々な活動に資金を使うことができます。
補助額(上限) | 450万円 |
補助率 | 1/2~3/4 |
この補助金は、持続的な賃上げを目的にしています。 人手不足の問題を解決し、仕事のやり方を効率化させることで、働く人一人ひとりの生産性を大きく向上させるための大きな投資に対して金銭的な援助を提供するものです。 つまり、企業がより多くの商品を生産するために必要な設備を整え、その結果として給料のアップも実現できるようにするための支援がこの補助金から受けられるのです。
補助額(上限) | 50億円 |
補助率 | 1/3 |
HACCP基準の設備を整えたい企業や事業者に対し、その取り組みを支援するのがHACCPハード事業です。HACCPハード事業では、食品安全管理システムの認証であるHACCPの取得を目指す企業が、そのために必要な施設改修や新設備の導入において財政的なサポートを受けられます。具体的には、衛生管理を強化するための施設改修や、エアーシャワー、殺菌機器の導入、温度制御装置、家庭向けパッキング機器などが補助の対象として認められます。
また、HACCP取得を効率的に進めるためのコンサルティング費用や、認証後の継続的な管理・運用を行う人材の育成費用も補助の範囲内です。施設建設や設備の導入は、従来の費用の半分で可能になる可能性があるため、コスト削減とともに、安全性と衛生面での品質向上を図れる重要な支援策となっています。
HACCPハード事業補助金の利点は、特に補助金が建築に利用できる点にあります。これにより、認証に必要な設備を更新し、工場全体の効率と生産性を高めることができるでしょう。
ただし、このHACCPハード事業は支援の対象や事業内容が決められているため、あらかじめチェックしておくことが重要です。
補助額(上限) | 5億円 |
補助率 | 1/2だがHACCP対象設備、建築に限られる。 |
米粉を使った新しい商品を生み出すために使うことができる大きな支援金です。具体的には、以下のような費用に対して利用可能です。
1)新しい米粉の商品を開発するための各種経費。
2)商品を市場に知らせるための広告宣伝費や、店舗の運営にかかる費用。
3)商品を作るための機械など、設備投資に関する費用。
4)商品を作る上で必要な米粉などの原材料費用。
補助額(上限) | 2億円 |
補助率 | 1/2 |
輸入原材料の価格上昇に苦しむ食品メーカーに対する生産性向上につながる補助金です 輸入原材料に依存するリスクを減らし、生産効率や品質の向上を図ることができます。
補助額(上限) | 2億円 |
補助率 | 1/2 |
フードテックをはじめとする先進技術を現実のビジネスで役立てるために用意されています。雇用する人件費にも使えるというのも大きなメリット。
補助額(上限) | 150億円 |
補助率 | 全額補助 |
六次化を中心とした農林水産業に対する支援を行うものです。 この補助金は、事業のアイデアや原材料(シーズ)が既に存在していることが前提条件となります。また、農協や組合などの組織がこの補助金を受け取ることが多く、民間企業による採択実績は比較的少ない傾向にあります。
補助額(上限) | 上限なし |
補助率 | 9割 |
「SHIFT事業補助金」は、環境省によって2022年にスタートした、比較的新しい補助金プログラムです。「工場・事業場における先導的な脱炭素化取組推進事業」という正式な名称を持ち、2030年までに国内でカーボンニュートラルを実現する目標に貢献するため、特に製造業の工場におけるCO2排出削減に取り組む企業を対象としています。
この補助金は、CO2排出量の削減を図る具体的な設備の導入に応じて、A、B、Cの3つのカテゴリーに分けられ、それぞれが異なる特徴と要件を備えています。Aタイプでは、補助上限額が1億円で補助率は1/3ですが、Cタイプでは補助上限額が5,000万円に設定され、補助率は最大1/2までとなっています。
新築の建物の建設は補助の対象外ですが、AとBタイプではCO2を削減するための設備導入を伴う工場改築など、一定の条件下で施設建築への補助が可能です。Cタイプでは建物の建設費は補助対象外となりますが、省エネ効果が高いとされるLED照明や太陽光パネルなどの導入も補助対象に含まれるという独自の特徴があります。
この補助金に関してはまだ実例が少ないですが、工場の省エネルギー化や脱炭素への取り組みを検討している事業者にとっては、大いに利用価値があるでしょう。
補助額(上限) | 1億円 |
補助率 | 1/3 |
補助額(上限) | 5億円 |
補助率 | 1/3 |
補助額(上限) | 5000万円 |
補助率 | 1/2 |
企業立地促進補助金とは、日本の地方自治体が企業の新規立地や事業拡張を支援するために提供する補助金です。 地域によっては、国の補助金と併用が可能な場合があります。
各自治体では5〜15%の補助が設定されています。工場を誘致したい地方においては、さらに充実した補助が提供されるケースもあります。
補助額は地域によって異なりますが鹿児島市では次のような補助額と特徴があります。
補助額(上限) | 6億円 |
補助率 | 12% |
特徴 | 国の補助金と併用が可能であり、同じ固定資産に対して複数の補助金を受け取ることができる |
※参照元:鹿児島市公式HPhttps://www.city.kagoshima.lg.jp/san-sousyutu/kigyoritchi/josesedo/honsyakinou.html
大規模成長補助金は、工場や設備への大規模投資を行う企業に対して提供される支援金です。中堅・中小企業が生産性を向上させたり、新たな拠点を拡大したりするために活用でき、特に10億円以上の投資が必要な事業が対象です。補助金は最大50億円まで支給され、補助率は3分の1まで適用されます。
この補助金は、賃上げを含む要件を満たすことが求められ、達成できない場合は補助金の返還が必要となるリスクもあるため、事前の計画が重要です。食品工場でも活用は可能ですが、投資規模やコスト構造を考慮した慎重な判断が求められます。
補助額(上限) | 50億円 |
補助率 | 1/3 |
特徴 | 補助金の上限額が非常に大きいが、求められる賃上げ条件等の観点で食品工場には条件が厳しい |
※参照元:経済産業省 公式HPhttps://www.meti.go.jp/information/publicoffer/kobo/2024/k240306001.html