HACCP未導入による罰則とリスク

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2018年6月に食品衛生法の改正法案が可決され、食品を扱う事業者は全てHACCPによる衛生管理を行うことが義務付けられました。2020年6月以降はこの対応が必須となりましたが、1年間は猶予期間として設けられていたため実質的には2021年6月から完全義務化となっています。
しかし店舗によってはまだ導入できていない・着手できていないという事業者もいらっしゃるのではないでしょうか。ここではHACCP未導入による罰則やリスクはどのようなものがあるのかを紹介・解説します。

HACCP未導入による罰則の明記は無い

条例や法律などは明文化された内容に基づき義務や権利の内容・範囲、罰則などの判断をすることになります。HACCPは食品衛生法に基づいておりますので、その内容に基づいた対応をとる必要があります。しかしながら改正された食品衛生法の中に、HACCP未導入による罰則は明記されていません。
一方で「都道府県知事等は、公衆衛生上必要な措置について、第一項の規定により定められた基準に反しない限り、条例で必要な規定を定めることができる。」という条文内容があり、これは端的にいうと「HACCPの義務化に従わない事業者への対応は各都道府県に委ねる」という意味になります。そのため基本的には各都道府県で定められた条例などに従う、という解釈になるでしょう。

都道府県の条例に違反した場合

都道府県によって定められた条例に違反した場合、地方自治法に明記されている内容に従って罰則が与えられることがあります。内容としては二年以下の懲役、もしくは禁錮、百万円以下の罰金、拘留、科料、もしくは没収の刑、もしくは五万円以下の過料を科される可能性があるでしょう。
これはもちろん「HACCPが未導入であれば直ちに罰則が与えられる」というわけではなく、それぞれの都道府県で定められた条例に従わなかった場合、こういった罰則を科される可能性があるということを理解しておきましょう。

食品衛生法に違反した場合

HACCPを導入していない事業者が直ちに「食品衛生法に違反している」と判断を受けることはないでしょう。ただし、HACCP導入云々に関わらず「食品衛生法に違反している」というような事象が起こった場合、行政指導や行政処分を受けることになるでしょう。
さらにそういった処分を受けた場合、事業者名や店舗名が公表されてしまい営業に大きな影響を与えてしまうこともあるでしょう。今の時代はネットニュースなどに取り上げられるとあっという間に情報が拡散されますので、「食品衛生法に違反した店」として消費者に認知されることになります。

騒音規制法

騒音規制法は工場や事業場などにおける事業活動、ならびに建設工事に伴い発生するような相当範囲にわたる騒音について規制をするとともに、自動車騒音の許容限度などを定めることによって生活環境の保全と国民の健康保護を行うことを目的とした法律です。
この騒音規制法に定められた基準を超えて周辺住民の生活や健康が脅かされていると判断された場合、市町村長・特別区長はその事業所などに対して改善勧告を行うこととなります。それを受けた事業者は騒音対策をしなければいけませんが、従わなかった場合には改善命令を下されることになります。

HACCP未導入による影響

ここまでは法律や条例などに明文化されている内容を解説してきましたが、直接的な罰則がないからといってHACCPを無視することは得策ではありません。HACCPを未導入のままでいることには、さまざまな影響が考えられます。

営業許可の取得時に確認される可能性がある

飲食店営業などの営業許可は保健所に対して申請を出し、調査を踏まえて取得することが可能です。この手続き上においては「衛生管理計画書の策定がされているか」をチェックされることがあり、HACCP導入がされているかどうかを確認されるということです。
現時点で直接的な影響がなくとも、HACCPは導入されている方が望ましいのは明白です。後から指導などが入る可能性も考慮すると、早期に導入している方がよいでしょう。

取引先からの信頼低下

取引を行うにあたっては、「その取引先からいかにして利益を得られるのか」「安定して取引できるのか」という観点は非常に重要です。さらに社会的な話や企業イメージを考えると、クリーンなイメージのない企業と取引をしていると自社のイメージも大きく低下してしまうことがあります。
そのため「義務化となったHACCPを導入していない企業は万が一の事故があった場合取り返しがつかない事になるかもしれない」という与信判断のもと、信用に値しないとして取引をしてもらえない可能性もあります。

企業イメージへの影響

昔に比べると今の時代は非常に高い衛生観念を持っている消費者が増えており、手袋着用の徹底やマウスシールドの使用など今までにはなかったような衛生対策も出てきています。そのため「義務化されているHACCPを導入していないお店」という印象を消費者に与えてしまうと、企業イメージの低下に繋がる可能性もあるでしょう。特に最近はアルバイト従業員などがSNSで情報を発信するリスクもあるので、注意が必要です。