アカネサスに聞いた!
食品工場における結露対策

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食品工場を建設・運営する上では結露に対する対策も不可欠です。このサイトを監修しているアカネサスさんに、結露によるカビ発生を制御する方法を聞きました。

放っておくと結露がカビに…

食品工場はどうしても、時間の経過ととともに結露が増えていってしまう傾向にあります。そしてその結露はいずれカビになってしまう可能性もあります。

カビの胞子が加工した食品に落下し増殖した商材が出回った後の対処を考えると、膨大な時間とコストが発生し信用も失ってしまう可能性があります。カビの発生原因の制御は食品工場にとって時間とコストとリスクの制御とも言えます。

そもそもカビの発生原因は?

カビの胞子は空気中に一定量浮遊しています。発生原因を大きく二つに分けるとすれば、

があります。この中でも結露が因子となったカビ発生は①です。そこで、まずは①の結露の原因を深堀りしてみましょう。

結露が発生するメカニズムとは?

結露の発生には、飽和水蒸気量が関係してきます。暖かい空気は湿度を潤沢に含むことができますが、冷たい空気は湿度を保つことができません。冬に空気が乾燥するのは空気が冷たく、湿度を保てないためです。暖かい日、コップに冷たい水をそそぐと、周りに水滴がつきます。コップの内部と外部の温度差が10℃以上あると、コップの外の暖かい空気が、コップ表面の冷たい水によって温度が下がり、それまで保持していた湿度(飽和水蒸気)を保てず、凝結し、水滴となります。

次に、結露のメカニズムがおおよそ理解できたとして、果たして天井から水滴が染み出すのでしょうか?

ご存じのように天井には天井材と天井裏があります。例えば天井裏が50℃、室内が25℃としましょう。その場合、室内天井材にも一定の熱伝導を防ぐ効果がありますが、天井材を保持している下地は金属の為、その下地が室内の25℃に近く冷やされた場合、下地金属が結露を起こします。

通常、一般設計の場合は天井裏の換気は行わないため、結露発生→天井空気の温度が高いため水分を飽和を繰り返しているうちに、飽和水蒸気量の限界を超え、温度差が少ない場合においても水滴の発生となります。その水量が増えれば水滴量も増え、常時天井材が湿っている状態となります。竣工当初は結露が少なかったにもかかわらず年を追うごとに水量が増えるのはこのためです。その結露水が広がって、カビの発生原因となります。

ちなみに……

①以外のカビ発生原因は、このようになっています。

②食品加工時の飛散物にカビが発生する の場合

切断などの機器、加工セクションは食品または食品栄養分を含む水滴が飛び散り、その栄養分にカビが発生します。また、機器洗浄時の栄養分を含む水が付着したり残留洗剤成分もカビが発生する原因となります。

③天井の表面、壁の表面、設置物の表面にうっすらカビが発生する の場合

室内がウェット環境(水産加工など)の場合、または湯気が大量に発生する加工場など天井表面、壁面表面 設置物(棚など)にうっすらカビが発生する原因は天井、壁面、床面がが濡れた状態になっており、室内空気中の水蒸気量が多く、湿度コントロール機器がない場合、その水分が蒸発時に天井表面、壁面表面、設置物に付着することが繰り返され、発生の原因となります。

これらに対する対策方法は?

ここまで複数のパターンのカビ発生原因や結露の発生原因について説明してきました。それでは、これらに対する対策を見ていきましょう。

①天井材そのもの、または天井裏からの水滴によりカビが発生する の場合

天井内換気をすることにより発生が抑えられます。ただし、近年外気温の上昇と室内管理温度帯の低下に伴う温度差が大きくなり、完全には止めれない状況となっています。経験上、天井裏に産業用除湿器を設けるか、天井材そのものを断熱効果の高い冷蔵庫パネルのようなものに交換する方法でほぼ制御することが可能です。

②食品加工時の飛散物にカビが発生する の場合

天井の清掃は困難なため、食品が飛び散る機器、加工セクションにはビニールの仮囲いを設けるなど、食品の飛散そのものを防ぐことが大事です。また、そのセクションの天井を高くするのもひとつの方法です。天井材は凹凸の少ない水拭きができる清掃しやすい材料を選択するようにしましょう。

③天井の表面、壁の表面、設置物の表面にうっすらカビが発生する の場合

室内の水分量(飽和水蒸気量)を抑えるために過去は給気と排気を同時に行う換気を行っておりましたが、近年の外気温上昇と、HACCP環境になかで、直接外気をフィルターなしで導入することが困難になってきたため産業用の除湿器の導入をお勧めします。

夜間、冷房運転を継続して運転されていらっしゃるところもいらっしゃいますが、冷房運転での除湿方法は機器内で強制的に結露を起こし渡連水として排水しているのですが、吸い込む空気が低い温度の場合そもそも飽和水蒸気は少ないため、床を乾かすところまで除湿はできません。除湿器の運転電気料金は空調機の半分以下です。

まとめ

上記の対策はどちらかといえば応急処置的な対策になります。

室内の結露と室外の結露は全く別物です。多くの場合、この現象の違いを理解されずに対処に困っていらっしゃる方が多く見られます。カビ、結露の発生の制御を行うには大掛かりな改修が必要になる場合もありますので、建替時に食品専門の設計、建設業者にお願いするようにしましょう。