食品関連企業・事業者がHACCPを導入する際には、7原則12手順に沿って進めていく必要があります。ここではその7原則12手順について、くわしく解説していきます。
HACCPの7原則12手順とは、Codex委員会(食品規格委員会)によって定められたHACCP導入のための規定。具体的な手順がまとめられており、企業はこれに沿って導入を進めていきます。7原則12手順は、前準備である5つの手順と7原則で構成されているのが特徴です。
※参照:厚生労働省「食品製造におけるHACCP入門のための手引書」(pdf)
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000081880.pdf
まず、企業内にHACCP導入を主導するチームを編成します。チームメンバーは、すべての関連部署から原材料・製造方法・品質管理といった実務に精通したスタッフを集めることが重要。HACCP導入に関する知識を有している人物が望ましいですが、該当する人物がいない場合は外部から専門家を招くことも検討しましょう。
チームの編成が終わったら、次は製品に関する説明書を作成します。これに記されるのは、製品名称・原材料・添加物名ならびに使用量・保存方法・包装形態・消費期限など。製品の特性としてかかわってくる、微生物・化学的特性といった安全面についても記載する必要があります。
製品がどのような用途で、実際にどのような消費者に利用されるのかをチェックします。用途については、加熱の有無といった使用方法、常温・冷蔵といった保存方法などを明確に記載。小児・高齢者・妊婦といった、特別な管理が必要とされる消費者も想定しなければなりません。
原料の受け入れに始まり、製造・調理、納品先・顧客に提供するまでの作業をどのように行うか、各工程を製造工程一覧図(フローダイアグラム)にまとめます。
作成した製造工程一覧図(フローダイアグラム)に基づいた工程になっているかどうかを、実際の現場で確認。内容と現場で異なる部分が見つかった場合は、内容の修正を行います。
前準備である手順5までが完了したら、手順6~12(原則1~7)へと進みます。
食品製造の工程において、どの部分に危害要因があるかを分析。危害要因とは、健康に害をなすと考えられる有害な微生物・化学物質・硬質異物などを指します。製造工程一覧図(フローダイアグラム)で明らかにしたすべての工程で危害要因を分析し、重大な危害要因は何かを特定していきます。
重要管理点とは、Critical Control Pointの頭文字を取ってCCPとも呼ばれます。これは、衛生管理手法におけるリスクを取り除くために欠かせない工程のこと。手順6で明らかにした危害要因に対し、どのプロセスでどのような対策を取るかといった、具体的な手順・工程を明確にしていきます。たとえば雑菌の殺菌方法、金属片などの混入を防ぐための探知、品質保持のための冷却などが挙げられます。
手順7で明確にした重要管理点をどのような方法で管理するか、その基準・指標を決めていきます。この際に、食品製造・管理における温度・時間・速度などの基準値を決めますが、設定する基準値は科学的な根拠に基づいて数値化できるものでなければなりません。さらに、リアルタイムで継続的に計測・記録できるものと決められています。
管理基準を設定したのち、その基準を満たしていることを確認するモニタリング方法を決めていきます。具体的には、温度・時間・水分量といった数値を「誰が」「いつ」「どのくらいの頻度で」「どのような方法で」行うかを詳しく決定。さらに、モニタリングの際には責任者名・品名・項目についても必ず記録に残さなければなりません。これはHACCPを遵守しているという証拠にもなるため、記録はとくに重要です。
モニタリングで万が一基準を満たしていなかったとき、どのように修正・改善するかを決めるのがこの工程です。製造工程に問題が発生した場合、どこまで巻き戻してその工程を正常化させるか、該当する製品はどのように排除すべきかなどをフォーマットにまとめ、改善措置のための手順を策定します。
HACCPに基づいて設定された製造管理・衛生管理といった工程が、手順通りに実施されているか、継続的に機能しているかを検証する方法を決めます。検証方法には内部検証と外部検証があり、内部検証とは製造を行う施設自らが検証を行う方法。外部検証は、施設外の第三者に検証を依頼する方法です。検証の結果、改善点が見つかった場合は速やかに対処します。
手順12では、1~11までの手順で策定してきた内容を文書化します。さらに、モニタリングの結果・検証データなどを記録として正確に残すことが重要です。この記録は、施設がHACCP計画を守り、正しく機能しているという証拠となるもの。そのため、記録を残すときは簡単に内容を改ざんできない方法を取ることが大切です。